FA関連
【知っていると役に立つキャビネットの話】
日東工業株式会社 東京産機営業所 太郎館 季寛
◆キャビネットって何?
一般的な辞書によれば「1.箱。特にテレビ・ラジオ・ステレオなどの外箱。
2.飾り棚。3.書類・備品などを収納する戸棚。」と記載されています。
日常では書棚のことを「キャビネット」と呼んでいることが多いのではないでしょうか?
そんな中、日東工業が活動している電材・電設、FA・制御、情報通信分野では「電気・電子機器収納を目的とするもの」のことを国内規格であるJIS規格、JSIA規格における呼称を優先し「キャビネット」としています。
ちなみに海外では「エンクロージャー」という呼び方が一般的なようです。
◆キャビネットに収納するのはどうして?
なぜキャビネットに機器を収納する必要があるのでしょうか?主に次のことが挙げられます。
1.内部に収納する電気機器・精密機器などを外部から保護する。
外部からの埃、水、熱などにより機器が故障しないように防ぐ。
2.人の安全確保
内部で短絡事故(電気の流れやすいものが電線間に接触するなどして電線間がショートして
停電に至る事故)が発生した場合、過電流が流れるとともに大きなアーク(焼け焦げや火花など)
が発生し、人身災害(火傷や感電など)を起こす危険性があります。
それらの熱やアークが箱内部から外部に飛び出さないようにして人の安全を守ります。
3.外観への調和
機器を覆い無しで取付ける場合、配線などがむき出しとなり見栄えが悪くなってしまいます。
また、いろいろな場所に設置されるため、壁の色や、街並み、施設などに調和のとれた外観
(色、形など)が求められます。
Q1 高IPでも屋内仕様なのはなぜ?
保護性能を示すIPですが、屋外の標準仕様状態で使用されるものはIP23以上の性能を有することとしています(一般社団法人 キャビネット工業会 金属製汎用キャビネット CA100)が、キャビネットの中にはIP65などそれ以上の性能を有しているのに屋内用というものがあります。この理由には以下の2点が挙げられます。
1.防錆性:IPは高くても屋外に設置した場合、部品の防錆力が屋外使用に耐えられない場合。
2.紫外線:パッキンなどの樹脂、ゴム部品が紫外線に弱い場合。
これらの要因で高IPであっても屋内用として表示されます。(日東工業CL、CF形ボックス等)
Q2 重耐塩仕様の定義は?
JIS規格等の公的規格には明確な基準、規制はありません。「耐塩仕様」等といった場合、どのような塗料や工程で、あるいは性能でなければならないといった規格、規制はありません。そのため近年、各工業界が独自の「耐塩塗装」基準を定めています。
日東工業では、一般社団法人 盤標準化協議会の技術資料に従って、
使用環境例:海岸から300m以内の屋外、屋側/性能:耐塩水噴霧試験1000h
の2つの条件を試験合格している為、「重耐塩」仕様の塗装としています。
しかしながら上記はいずれも「塗装」に関する目安であり、製品全体に対する耐塩性を定義しているものではないということです。
つまり、強固な耐塩を要求される塩害地域に使用される製品については、素材自体をステンレスなどの高耐食材料にして製品全体を塩害対策品とすることが有効な対策となります。
Q3 遮光板の効果はあるの?
遮光板とはキャビネットの外側に取り付け、キャビネット本体に光が直接当たらないようにする
板のことです。光を当てないことが目的ではなく、多くは炎天下におけるキャビネット内の温度上昇を防ぐのが目的です。(遮熱板と言うこともあります。)
では、遮光板の効果は実際どれくらいあるのでしょうか?
左記のように遮光板有りと無しでは3℃~4℃ほどの温度差があると結果が出ています。
通信機器等は高温度環境で使用すると誤動作、故障の原因となります。特に、屋外のキャビネットに搭載する場合は内部発熱量の他に日射の影響を考慮する必要があります。塗装色の黒色と白色でも温度差が生じます。
屋外で使用されるキャビネットは搭載機器発熱量、設置環境に応じて遮光板、換気扇、熱交換器、クーラ等の熱対策を考慮する必要があります。
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