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最適な温度のコントロールのための熱電対と測温抵抗体 技術情報

株式会社 奈良電機研究所

熱電対及び測温抵抗体の主な特徴

 温度センサーと言えば熱電対や測温抵抗体があげられますが、選定するにあたり両者の簡単な説明をしていきたいと思います。
 熱電対の特徴として簡単に言いますと、長所としましてはやはり安価であり広い温度範囲の測定が可能(例えばK熱電対であれば-200~1200℃、R熱電対であれば0~1600℃)。
 また測温抵抗体と比較しますと極細保護管の製作が可能の為、小さな測温物の測定、狭い場所の取り付けも可能になります。また短所には下記表1のように測温抵抗体に比べますと精度が劣り、測定温度の±0.2%程度以上の精度を得ることは難しいといった所があげられます。
 また測温抵抗体の特徴といたしましては、振動の少ない良好な環境で用いれば、長期に渡って0.15℃のよい安定性が期待でき、特に0℃付近の温度は熱電対に比べ約10分の1の温度誤差で測定できる為、低温測定で精度を重視する場合に多く使用されています。
 また短所といたしましては、抵抗素子の構造が複雑な為、形状が大きくその為応答性が遅く狭い場所の測定には適しません、また最高使用温度が熱電対と比べ低く、最高使用温度は500℃位になっており、価格も高価になっています。
 また熱電対及び測温抵抗体ともに細型タイプ(8φ位まで)はシース型を主に使用されておりますが、特徴といたしまして、小型軽量、応答性が速い、折り曲げが可能、長尺物ができる、耐熱性が良いなどがあげられます。
 このように熱電対は安価で高温かつ広範囲に測定可能、更に熱応答性が速い(極細保護管の製作可能)のに対し測温抵抗体は低温測定ではあるが、温度誤差は少なく長期的に渡って安定した検出ができるなどのメリットがあります。
表1 熱電対素線の温度に対する許容差
記号許容差の分類
クラス1クラス2クラス3
B温度範囲
許容差


600~800℃
±4℃
温度範囲
許容差

600~1700℃
±0.0025 ・ I t I
800~1700℃
±0.005 ・ I t I
R,S温度範囲
許容差
0~1100℃
±1℃
0~600℃
±1.5℃

温度範囲
許容差

600~1600℃
±0.0025 ・ I t I

N,K温度範囲
許容差
-40~375℃
±1.5℃
-40~333℃
±2.5℃
-167~40℃
±2.5℃
温度範囲
許容差
375~1000℃
±0.004 ・ I t I
333~1200℃
±0.0075 ・ I t I
-200~-167℃
±0.015 ・ I t I
E温度範囲
許容差
-40~375℃
±1.5℃
-40~333℃
±2.5℃
-167~40℃
±2.5℃
温度範囲
許容差
375~800℃
±0.004 ・ I t I
333~900℃
±0.0075 ・ I t I
-200~-167℃
±0.015 ・ I t I
J温度範囲
許容差
-40~375℃
±1.5℃
-40~333℃
±2.5℃

温度範囲
許容差
375~750℃
±0.004 ・ I t I
333~750℃
±0.0075 ・ I t I

T温度範囲
許容差
-40~125℃
±0.5℃
-40~133℃
±1℃
-67~40℃
±1℃
温度範囲
許容差
125~350℃
±0.004 ・ I t I
133~350℃
±0.0075 ・ I t I
-200~-67℃
±0.015 ・ I t I
※ItIは絶対値

熱電対の選定

 現在、熱電対といえばK熱電対が主流ですがその他B,R,S,N,E,J,Tなどがあり温度範囲によってさまざまですが特にR熱電対は高温用として焼却炉関係に多く用いられています。
 このように測定する温度や環境によってどの種の熱電対を使用するかを選定します。(表2)

表2 温度に対する許容差
測定温度
(℃)
許容差
クラスAクラスB
ΩΩ
-200±0.55±0.24±1.3±0.56
-100±0.35±0.14±0.8±0.32
0±0.15±0.06±0.3±0.12
100±0.35±0.130.8±0.30
200±0.55±0.20±1.3±0.48
300±0.75±0.27±1.8±0.64
400±0.95±0.33±2.3±0.79
500±1.15±0.38±2.8±0.93
600±1.35±0.43±3.3±1.06
650±1.45±0.46±3.6±1.13
700±3.8±1.17
800±4.3±1.28
850±4.6±1.34

 次に保護管径ですが一般的には1.0φ~22φが多く使用されていますがこれも環境によって異なり細径タイプは熱応答性は速いが耐久性がなく、逆に径の太いタイプは耐久性はあるが熱応答性は遅いなど、それぞれ保護管径によって特徴を示しています。また近年、温度調節器が精密になり応答性の良い機種が増加していますが、これはいくら応答性が優れていても温度センサーが熱応答性の良いものでないと無意味に近い状態といえますが、そんな中、超極細タイプが開発され0.15φ~0.5φなどが開発されていますので、是非お試し下さい!尚、一般的には1φ~8φまではシ-スタイプでよく使われています。
 また保護管の材質については表4のように使用環境や測定温度によって異なりますが、一般的にはSUS304とSUS316の割合が多く使用されています。
 熱接点ですが先端露出型、接地型、非接地型の3種類ありますが(表5)これも使用環境によって異なる為、下記表を参考にして下さい。一般的には非接地型が多く使用されている為、中には指定がないと非接地型で製作される事がある為注意して下さい。
 最後に熱電対を選定するにあたっておおまかに分けてリード線タイプと端子筐タイプ(密閉型、開放型があります)がありますが、これは取り付け方によって異なり、どちらを選定するかは最初にイメ-ジしておく必要があります。

表3 熱電対素子の種類と性質
分類
記号
構成材料使用温度
範囲
(℃)
素線系
(mm)
常用限度
(℃)
[過熱使用限度]
摘要
+脚-脚
貴金属熱電対
Bロジウム30%
を含む白金
ロジウム合金
ロジウム6%
を含む白金
ロジウム合金
600~15000.501500 [1700]酸化・不活性ガス雰囲気での長時間使用が可能。
還元雰囲気や金属蒸気中での使用は不可。
熱起電力が極めて小さいため、補償導線は銅導線を使用する。
Rロジウム13%
を含む白金
ロジウム合金
白金0~14000.501400 [1600]酸化雰囲気に強く、還元性雰囲気に弱い。
水素・金属蒸気に弱い。
安定性が良く、標準熱電力に適する。 熱起電力が小さい。
Sロジウム10%
を含む白金
ロジウム合金
白金0~14000.501400 [1600](R熱電対に同じ)
卑貴金属熱電対
Nニッケル・クロム・シリコンの合金ニッケル・シリコンの合金-200~12000.65
1.00
1.60
2.30
3.20
850 [900]
950 [1000]
1050 [1100]
1100 [1150]
1200 [1250]
(K熱電対に比較して)1000~1250℃での酸化性が優れている。
250~550℃の温度範囲で安定する。両脚は常温では非磁性。
600℃以下で熱起電力の直線性が悪い。  両脚の電気抵抗が高い。
Kニッケル及びクロムを主とした合金ニッケルを主とした合金-200~10000.65
1.00
1.60
2.30
3.20
650 [850]
750 [950]
850 [1050]
900 [1100]
1000 [1200]
酸化性雰囲気や金属蒸気に弱い。
還元性雰囲気(特に亜硫酸ガス・硫化水素)に弱い。
熱起電力の直線性が良い。
Eニッケル及びクロムを主とした合金銅及びニッケルを主とした合金-200~7000.65
1.00
1.60
2.30
3.20
450 [500]
500 [550]
550 [600]
600 [750]
700 [800]
酸化・不活性ガス中に適し、還元性雰囲気に弱い。
熱起電力が大きい。
Jより腐蝕性が良い。
非磁性。
J銅及びニッケルを主とした合金-200~6000.65
1.00
1.60
2.30
3.20
400 [500]
450 [550]
500 [650]
550 [750]
600 [750]
還元性雰囲気に適する(水素・一酸化炭素にも安定)。
熱起電力の直線性が良い。
均質度不良。
(+)脚が錆び易い。
T銅及びニッケルを主とした合金-200~3000.65
1.00
1.60
2.30
200 [250]
200 [250]
250 [300]
300 [350]
還元性雰囲気に適する。
低温における精度が良い。
均質度良。

表4 金属保護管/非金属保護管
種類材質(記号)常用温度
(℃)
最高使用
温度(℃)
摘要
金属保護管
ステンレス鋼管SUS304850900最も多く使用され、耐熱性・耐酸性に優れる。 硫黄・還元性ガスに弱い。
SUS316900950モリブデンを含み、耐熱性・耐酸性・耐アルカリ性に優れる。 SUS304より耐蝕性が一段と良い。
SUS316L9001000SUS316のCの量を少なくしたもの。 さらに耐蝕性に優れている。
SUS310S10001150ニッケル・クロム成分が多く耐熱性に優れる。 硫黄を含む高温高濃度ガスに弱い。
高クロム鋼管P-410001200フェライト系クローム鋼。 耐熱性・耐蝕性に優れる。 硫黄・還元性ガスに弱い。
ハステロイHasB10001050全ての濃度及び沸騰点までの温度の塩酸に適する。 塩化水素ガス・硫酸・リン酸に耐蝕性あり。
HasC10001050酸化性・還元性雰囲気に耐蝕性あり。 塩化第2鉄・塩化第2銅・湿塩素ガスに優れる。
カンタルALKA11001350高温にて機械的強度大。 酸化雰囲気・硫化物ガス・炭素ガスに優れる。
チタンTi400500低温では中性・アルカリ性・酸性の多くのものに対して耐蝕性に優れているが、高温では脆くなる。
インコンネルINCo10501150高温における酸化・還元性雰囲気に強いが、硫黄系雰囲気に弱い。
鋳鉄700800機械的強度大。 アルミ溶湯用に使用。
非金属保護管
硬質ガラスGT500600低温の耐酸・耐アルカリ用に使用。 衝撃に弱い。
パイレックスが代表的。
高純度アルミナPS-016001800ガスに対して気密であり、酸化及び還元雰囲気中でも良好。 熱伝導率が高い。
磁製管1種PS-115001600耐衝撃に特に弱く溶解金属・燃焼ガスに強い。 一般に磁器はアルカリ性に弱い。
2種PS-214001500PS-1より耐熱性がやや劣る。 熱衝撃に弱い。
石英ガラスQT10001100熱膨張係数・熱容量が小さく、熱衝撃に強く応答性が良い。
アルカリに弱く、酸性に強い。水素・還元性ガスは透過する。
テフロンTF200250ほとんどのものに対して耐薬品性はあるが、防蝕剤には適さない。
テフロンの上には、いかなるものも付着しない。

測温抵抗体の選定

 測温抵抗体は1989年位まではJPT100Ωというのが主流となってありましたが、今では全てPT100Ωに替わっていますので熱電対の種類がB~T熱電対と幅広いのに比べ測温抵抗体=PT100Ωと理解して頂いて良いと思います。
 また熱電対の場合は1.0φ~22φが主でしたが、測温抵抗体の場合は先端に素子が入るため1.6φから22φが主になっております。
 保護管材質においては表5のように熱電対と同じ内容にはなっていますが、やはり測温抵抗体は熱電対に比べますと低い温度での使用が多い為、薬品での腐食性等がない場合以外が一般的にSUS304かSUS316が最も多く使用されています。その他の選定においてはほぼ熱電対と同じ内容になっています。

表5 熱接点の形状

型式形状摘要
先端露出型
熱電対素線をシースから露出して熱接点を設けた形状
 (先端をエポキシ樹脂等でシールすることもできます)。
応答速度は最も速く、わずかな温度変化にも追従します。 しかし気密性・機械的強度が極端に劣るため、腐蝕性雰囲気中や高温高圧下での長期間使用は避けてください。
接地型
熱電対素線をシースの先端に直接溶接して熱接点を設けた形状。
応答速度が速く、高温高圧下の温度測定にも適しています。
ただし、素線がシースに接地しているため、危険箇所や雑音電圧のあるところには不向きです。
非接地型
熱電対素線をシースと完全に絶縁して熱接点を設けた形状。
応答速度は接地型に比べ劣りますが、熱起電力の経時変化が少なく、比較的長時間の使用に耐えます。
また雑音電圧にも影響されずに使用できます。

その他下記の仕様も製作可能です

 (1)一般的に熱電対はクラス2、測温抵抗体はB級が主ですがより精度を高める為、クラス1及びA級の製作。
 (2)センサー取り付けの為、保護管にご指定のネジやフランジ溶接、タンク等取り付けにおけるウェルの製作。
 (3)腐食防止の為のテフロンチューブ被せとテフロンコーティング及びモールド加工。
 (4)保護管の曲げ加工。
 リード線は一般的にビニールリードと外ステンリード及びガラスリードが主流ですが、それ以外に柔軟性に優れたシリコンリードや耐薬品、腐食性に優れ250℃以下までの耐熱性のあるテフロンリード、熱電対のみですがMAX550℃まで耐えられる石英リードの仕様製作。
 耐圧防爆構造製作。
 ダブルエレメント。

最後に一言

温度センサーを良い状態のまま長く使用するには、お客様の選定方法で決まります。
更に温度調節器の機能をうまく引き出すのも温度センサー次第です。
その環境に応じた独自のセンサーを作ってみませんか?!

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