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技術情報

電設資材関連

知ってると役立つ、電線のはなし。 <パート2> 技術情報

スズデン株式会社 ユーボン販売推進部

電線・ケーブルの選定と布設

 電線・ケーブルの用途・選定については幅が広い。各用途に合わせて、確認しなければなりません。使用する用途・環境・求められる規格等を確認し、選定を行う必要があります。
 Bell No49「知っていると役立つ、電線の話。パート1」にて紹介した材質・規格・導体サイズの紹介を踏まえ、電線の許容電流値と配線による事故事例を取り上げ、ご説明致します。

塩化ビニル(PVC)の選定・事故事例

 使用電線・UL1015 AWG10 許容電流58A
 電線の許容電流値 : 気中1条配線 周囲温度40℃
 *上記電流値は電線メーカーのカタログより抜粋の参考値です。
1. 仕様負荷
 動力系配線/最大負荷電流値25A
 配線状況 : 3段4列/管路布設12本を結束

I=η0
Τ10
nγRth

   γ=γ0{1+α(Τ1-20)}

I : 通電電流(A)
η0 : 多条布設の場合の低減率
Τ1 : 導体温度(℃)
Τ0 : 周囲温度(℃)
n : 線心数(=1)
γ : T1℃での導体抵抗(Ω/cm)
γ0 : 20℃での導体抵抗(Ω/cm)
α : 抵抗温度係数(1/℃)(銅 : =0300393)
Rth : 全熱抵抗(℃・cm/W)
d : 電線の外径(mm)
3段4列
d
d
ddd

 上記のような3段4列結束、管路配線の場合多条布設の場合の低減率(ηo)=0.41となる。

2. 導体温度の計算結果

UL1015 10AWG η0=0.41
Τ02030405060708090100
Τ1130144158178187201216230244
※I=30、γ0=3.59x10-5、Rth=399  Τ0:周囲温度  Τ1:導体温度

3. 結果
 12本の電線を結束し管路布設した場合、周辺温度が40℃の場合でも導体温度は約150℃となり、使用時より電線の耐熱スペックの105℃を上回る結果となり、 焼損事故を起こす結果となった。
 今回の事例以外でも様々な電線の特性による事故事例は多種多様にあります。前号・パート1で紹介した規格・サイズ・材質と電線の特性を良く理解して頂き、事故の無いよう選定して下さい。
    *ここに上げた数値は机上計算の参考値です。
     メーカー、材質、構造の違いにより異なります。

事故状況

電線の結果管路材の結果

コメント1(電線の結果)
 外皮(シース)の状況は、電線を柔らかくする材料等が抜けて本来の材質の塩化ビニル(PVC)のみが残り硬化している状況になっている。
コメント2(管路材の結果)
 内部が高温になり、結束バンドで強く締め付けた箇所の損傷が激しかった。

結論

 電線のサイズ選定に関しては、58Aの許容電流に対し負荷25Aの選定であり間違いでは無かった。選定の基準となっている電流値は気中布設の1条布設のデータであり多条布設を行う場合での選定では間違いであると言える。
1.多条布設を行った事により、電線同士の発熱による許容 電流値の低減が加速した。
2.管路材による放熱遮断が起こり、更なる発熱する条件を引き起こした。
3.結束バンドを多様し(管路材の中、管路材と周辺電線等との結束)外部からの熱影響を受けた事も事故原因の起因となった。

対策と注意事項

1. 多条使用時は電流値が減少するので、許容電流値の確実な算出を行う。
2. 12本等の多条布設を避け、をなるべく距離を取り出来る限り少ない本数で布設を行い、放熱出来る状況での配線を行う。
3. 管路材のサイズにも注意し、放熱出来る環境での配線を行う。
4. 選定時は周辺温度と電線の負荷による発熱を考慮し安全値を確認する。
* 電線の許容電流値減少係数(温度による)に関しては、電線メーカーのカタログを参照下さい。

ロボットケーブルの布設間違いによる事故事例

 電線・ケーブルの扱いにおいて注意しなければいけない布設前の準備として、くせ取りと撚り方向の確認がある。
 ここでは、ロボットケーブルの配線における断線事故の事例を取り上げ、電線・ケーブルの持つ特性の一例紹介致します。
事故事例
1.仕様負荷
 信号系配線/ケーブルキャリア
 電線1・超耐久ロボットケーブル 0.2SQX2P
 電線2・ロボットケーブル 0.2SQX3P
 電線1の仕様:フッ素樹脂絶縁/ビニールシース
 電線2の仕様:ビニル絶縁/ビニールシース
 布設状況:ケーブルキャリアへ2種類のロボットケーブルを布設。

断線事故状況
1.超耐久ロボット-ブルの捻じれ現象

黄・茶線心とび出し
捻じれ
被覆破れ
写真 2

2. ロボットケーブルの座屈現象
座屈の跡(曲がり)がみられる
半断線部
通常部
写真 2

3. ケーブル同士のこすれ現象
印刷が消えている
写真 3

断線の原因

写真1:超耐久ロボットの分析
 捻じれ現象の原因
  ・電線のクセを取らずに配線を行った。
写真2、3:こすれ、座屈の分析
  ・混配線による無理な応力がかかった。(シース表面の印字が消えかかっている)

布設時の注意事項

1. 捻じれ現象が起こらないようにする為には、下記の点に注意し取り出しを行わなければならない。

スパイラル状の引き出し方
ターンテーブル等を利用した引き出し方

2. ケーブルキャリア内での配線時には、固定、緩み、外径の違う混配線、張力に注意を払い下記の理想的な布設状態にする事が必要である。
ケーブルに張力が加えられた状態ケーブルを緩ませ過ぎた状態
理想的な配線状態

横幅に余裕あり仕切り板あり
仕切板
ケーブルケーブル
エアホースとの配線外径が異なるケーブルの配線
仕切板仕切板
エアホースケーブル太いケーブル細いケーブル

まとめ

1. ケーブルは緩み過ぎない。
2. ケーブルキャリア内での固定は行わない。
3. 混合配線は避ける。(仕切り板を設ける)
4. 外径の大きく異なる配線は行わない。
5. フラットな配線を行う。(重なり合う配線はしない)
6. ケーブルに張力は加えない。

FAネットワークケーブルについて

 FA(ファクトリーオートメーション)の現場においては省配線・インテリジェント化等を目的とした種々のネットワーク方式が広く普及しています。 これらのネットワークはFAネットワーク、フィールドネットワーク、フィールドバス等と呼ばれていますが、FAの分野にとどまらず、PA(プロセスオートメーション)、BA(ビルオートメーション)など、その応用分野はますます広がっています。その中でもネットワーク仕様を公開し、多くのメーカーが接続製品を開発・販売しているものをオープンネットワークと呼びます。ここでは、それらのうちのいくつかについて、接続部品であるケーブルの側面から見た概要を紹介します。

CC-Linkファミリー

CC-LinkはCC-Link協会(CLPA : CC-Link Partn Association)が提唱するネットワーク方式で、PLCと種々のフィールド機器をつなぐフィールドレベルのネットワークです。

 現在では、CC-Linkの他、安全ネットワーク化したCC-LinkSafety、センサレベルのCC-Link/LT、イーサネットベースのコントローラ間ネットワークCC-Link IEとそのバリエーションを増やしています。CC-Link協会に加盟しているパートナー企業は2007年9月末現在で900社以上となっており、日本国内だけでなく、海外のパートナー企業も半数以上を占めています。
 CC-Linkは制御と情報を同時に扱える高速フィールドネットワークであり、専用ケーブルを使用し10Mbps/100mの高速伝送から、156kbps/1200mの長距離伝送までをカバーしています。現在主流となっているCC-Link Ver.1.10対応ケーブルを使用することで、機器間のケーブル長を20cmまで短くすることができ、機器のレイアウトも自在です。
 CC-Link SafetyはCC-Linkに安全通信機能を備えた安全フィールドネットワークです。伝送路としてはCC-Linkと同じケーブルを使用します。また、Safety対応機器の他にも既存のCC-Linkリモート局を接続することができます。
 CC-Link/LTはCC-Linkの高速性を保ったまま配線性を向上させた、盤内・装置内用の省配線ネットワークです。ケーブルとしては専用のフラットケーブルを使用し、専用コネクタを使用することにより、ワンタッチでのコネクタ取り付けを実現しています。ユニットの増設・追加も簡単です。2.5Mbps/35mから156kbps/500mまで、高速性と長距離伝送を実現しています。

シース
編組しゃへい(接地線入り)
アルミポリエステルラミネートテープ
導体
絶縁体
介在
図1. CC-Link用ケーブル

また専用フラットケーブルの他、VCTFコード等の使用が可能となっており、より構築しやすいネットワークとなっています。
 CC-Link IEはEthernetの技術をベースとした情報系から生産現場までを垂直統合する統合ネットワークとしてCC-Link協会が提案しています。現在は光ファイバを通信媒体に使用する、コントローラ間ネットワークの仕様が公開されています。

DeviceNet / EtherNet/IP / CompoNet

DeviceNet Vendor Association)により普及促進が進められているオープンネットワークであり、特にDeviceNet、EtherNet/IPは北米を中心に広く普及しています。
 DeviceNetはフィールドレベルのネットワークであり、通信ケーブルとして通信回路用の電源線も一体となった専用の複合ケーブルを使用します。ケーブルの種類として国内では太いタイプ(THICKタイプ)と細いタイプ(THIN)タイプが広く知られていますが、この他にもDeviceNet仕様としてはフラットケーブルやしゃへいなしのタイプなど複数のケーブル仕様が規定されています。配線方法はスター結線、マルチドロップ、T分岐など自由度の高い配線が可能です。

電源線(PVC)/Power pair
通信線(PEF)/Communication pair
接地線/Drain wire
アルミポリエステルラミネートテープ
Aluminum-polyester laminated tape
編組しゃへい/Braind shield
シース/Sheath
図2. DeviceNet用ケーブル

 EtherNet/IPはイーサネットベースのネットワークであり、DeviceNetの通信プロトコル(CIP)をEthernet、TCP/IP上で実現したもので、フィールド機器などの生産システムとOA用PCなどのビジネスシステムの混在も可能です。伝送媒体としては、100BASE-TXやギガビットイーサネット、光など、イーサネットで規定されている媒体を使用することができます。
 CompoNetは新規に仕様策定されたネットワークであり、msオーダの高速応答、多ノード・小点数分散・省配線性などを実現したセンサ&アクチュエータ用ネットワークです。単なるI/O通信だけでなく、メッセージ通信も可能であり、ネットワーク階層を越えて通信することが可能です。
 通信ケーブルとしては、圧接加工で施工性に優れた専用の2種類のフラットケーブルに加えて、低コストで入手性の良いVCTFコードが使用できます。マルチドロップとT分岐の組み合わせに加えて、リピータによる幹線の延長、副幹線分岐、異種ケーブル接続が可能となっており、配線の自由度が高く仕様変更にも容易に対応可能です。今後、日本から世界へと広く普及して行くことが見込まれます。

PROFIBUS / PROFINET

 PROFIBUSとは1980年代にドイツでSiemens, Bosch,ABB 等が共同で開発したフィールドバスで、現在はPROFIBUS Internationalの下、世界中にもっとも広く普及しているネットワークと言えます。使用目的に応じて、主にFA用のPROFIBUS-DPと、PA用のPROFIBUS-PAがあります。
 PROFIBUS-DPは専用ケーブルを使用し、12Mbps/100mから9.6kbps/1200mまで、高速通信から長距離通信までをカバーしています。

シース
編組しゃへい
アルミポリエステルラミネートテープ
導体
絶縁体
図3. PROFIBUS用ケーブル

 PROFIBUS-PAはIEC61158で定められた電気仕様に準拠しており、2線式電源供給と防爆仕様に対応しています。
 PROFINETは、リアルタイム性が要求される工場ネットワークをEthernet上に実現するオープンな産業用Ethernet規格です。一般のTCP/IP 通信とリアルタイム通信を同じEthernetの伝送路上で完全に共存させる事ができます。

産業用Ethernet

 Ethernetはコンピュータ間通信の方式として広く普及しています。特にOA用のネットワークとして欠かせないものとなっており、伝送速度の高速化や光化・無線方式など熟成と進化を続けていますが、その汎用性・高速性・将来性・廉価性などを理由に、産業用ネットワークの物理層として採用する動きが盛んです。先に紹介したEtherNet/IP, PROFINETの他にもFL-net, TCnet, Vnet/IP, MODBUS/TCP, など非常に多くの方式が仕様化されています。伝送媒体としては方式にもよりますがEthernetで規定されているツイストペア、光、無線などが使用できます。ツイストペアとしてはOA用のLANケーブルも使用できますが、FA用の環境要因を考慮したしゃへい付きタイプのケーブルがよく使われます。今後もますますその応用範囲は広がって行くものと考えられます。   

資料提供:倉茂電工株式会社

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