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電設資材関連

ビニルテープの歴史 技術情報

住友スリーエム株式会社

はじめに

 ビニルテープの歴史は3M社が世界で初めてビニルテープを開発して、今年で63年目を迎える。今では電気絶縁テープとしてごく一般的なポリ塩化ビニルテープだが、1940年代の前半までは綿布などに混和物をすり込み、さらに片面にゴム系粘着剤を塗ったものがフリクションテープと呼ばれ使用されていた。当時、ポリ塩化ビニルはケーブル絶縁体等には使用されていたが、現在のポリ塩化ビニルテープに見られるような柔軟性に富む材質のものはまだ実用として世の中に存在していなかった。これを3M社が1946年に長期安定性の良いテープに関する特許を取得して、同年に最初のビニルテープが製造された。
 1948年にはビニルテープの仕様が整理され、現在に至る製品型番が設定された。それらのうち、代表的なものが厚さ7ミル* (0.18mm)の黒色ポリ塩化ビニルテープ「33」である。当時のテープは<スコッチ>33電気絶縁用ビニルテープと呼ばれ、信頼性の目安となる温度指数において、高温側が80℃、低温側が-7℃の性能を有していた。その後いくつかの改良が加えられ現在では第4世代にあたる<スコッチ>スーパー33プラス電気絶縁用ビニルテープが上市されている。このテープは改良の結果、柔軟性が更に向上し、温度指数も高温側が105℃、低温側が-18℃と広い温度指数を有している。

*1ミルは、25.4ミクロン

構造

 ビニルテープは三層から構成されている。

 基材
 プライマ
  粘着材


(1)基材(Backing)
最も外側に位置し、ビニルテープの絶縁性、保護性、色などの主要な性能を決定する。ポリ塩化ビニルを主成分とし、可塑剤、難燃剤、加工助剤、顔料などが配合されている。
(2)粘着剤(Adhesive)
内側に位置し、テープ基材を対象物にすばやく固定する。ゴムを主成分とし、それに粘着性を付与する粘着付与剤、流動性を調整してのりずれを防止する架橋剤、その他に可塑剤、充填剤などが加えられる。
(3)プライマ(Primer)
テープ基材と粘着剤の中間に位置し、両者の接着性を強化し、粘着剤の背面移行を防止する。

用途

 ポリ塩化ビニルテープはその優れた電気特性や耐候性から主に次のような用途に使用されている。
(1)電気絶縁用途:600V以下の、主に電気の電線・ケーブル接続部の電気絶縁及び保護
(2)防食・保護用途:パイプ等の防食や、高圧ケーブル接続部の外装保護
(3)カラーコーディング:各種の識別目的での使用
(4)結束用途: 電線等の結束

選定のポイント

(1)温度指数(Temperature rating)
 ビニルテープは、温度指数の範囲によってグレード分けすることができる。温度指数の試験方法はCSA(Canadian Standards Association)規格やIEC(International Engineering Consortium)規格によって定められている。
 またJIS規格ではJIS C 2336 B種の中でIECに準じた方法が規定されている。
 試験方法の概要:高温側の試験は、決められた温度で加速劣化試験を行い、規定時間後の柔軟性と絶縁破壊の強さが検証される。低温側の試験は、決められた温度で調整された試料が、既定値以上の粘着力や柔軟性を持ち合わせているかどうかが検証される。
 したがって、高温側の温度指数が高いことは、ビニルテープの熱劣化に対する耐久性が高いことを意味し、低温側の温度指数が低いことは、そのビニルテープを用いて寒冷環境下でも確実に施工できることを意味する。上位グレードのビニルテープは、過酷な環境下でも性能が安定しているため、長
期信頼性に優れ、また修繕コストも低減することができる。

(2)巻き易さ(Comformability)
 テープの巻き易さは、作業者の主観によるところが大きく、定量化しにくい部分である。いずれのビニルテープも巻くことはできるが、突起や凸凹のある表面に対してもしわやひだを作ることなく巻けるとは限らない。一般的には、テープ基材は柔軟で伸びが大きく、粘着剤は粘着力が高く流動しにくい方が巻き易さに優れている。

(3)規格対応
 電子機器や電子製品にビニルテープを用いる場合、機器と同様にUL(Underwriters Laboratories)規格やCSA(Canadian Standards Association)規格の認定が必要となる場合がある。

規格

 ポリ塩化ビニルテープに関する規格としては、用途や地域により様々な規格が存在する。代表的なものとして、電気絶縁用途では、JIS規格(JIS C 2336)のほかにアメリカのUL規格、カナダのCSA規格などがある。また防食用途ではJIS規格(JIS Z 1901)があるが、その他にも使用する用途によって業界毎にさまざまな規格が存在する。
 ここで注意しなければいけないのは、同じような用語を使っていても試験方法が違えば結果は違ってくるということである。一例として、低温特性と言った場合に、施工後に屈曲する場合としない場合ではその特性温度が大きく変わってくる。カタログの数値だけを見て判断することは危険であり、その試験方法にも注意を払う必要がある。
 住友スリーエム株式会社では、JIS規格(JIS C 2336)品としてNo.117テープ、難燃性・広温度範囲グレードとしてUL規格、CSA規格をもったスーパー33プラス、スーパー88、No.35テープ。防食用としてNo.50テープなどを販売している。

No.117テープはJIS C 2336(電気絶縁用ポリ塩化ビニル粘着テープです。
No.117テープ代表特性値

項 目JIS C 2336
A種 規格
No.117テープ
寸法厚さ(mm)0.2±0.030.19
幅(mm)19±1.018.5
長さ(mm)20+1.0/-020.4
引張り強さ(N/10mm)15以上27.4
伸び(%)100以上200
試験板粘着力(N/10mm)0.5以上2.9
50%モジュラス(N/10mm)12.2
絶縁耐力一常態(kV/mm)25以上54
(注)数値は、測定値でありその値を保証するものではありません。

試験方法:
引張り、伸び、50%モジュラス:テープを300mm/minの速さで引っ張った時の値。引張り、伸び:テープ破断時の値。50%モジュラス:テープを50%伸張させた時の応力。
試験板粘着力 : SUS板にテープを2kgローラーで1往復し、20~40分放置後に180度方向に300mm/minの速さで剥離する。

各国の粘着力に対する要求特性
国名日本アメリカカナダ
項目JIS C 2336
(1999)
A種
UL510(2008)CSA C22.2
No.197-M1983
(2003)
粘着力0.5N/10mm
以上
1.75N/10mm
以上
(16oz/in 以上)
1.75N/10mm
以上

粘着力の測定方法:
SUS304板にテープを2kgローラーで1往復圧着し、20~40分放置後、180度方向に300mm/minの速さで引き剥がした時の強度。
ただし、JIS C 2336は、360番の研磨紙で研磨したSUS板、UL510、CSA C22.2は鏡面仕上げのSUS板を使用する。




試験方法
引張り、伸び、モジュラス試験


粘着力試験(SUS板)

巻き方の基本

 ・ テープは引張りながら巻きつける。
 ・ 1/2重ねで巻きつける。これにより、粘着力と絶縁性能が確保される。
 ・ テープ終端は、はがれ(Flagging)防止のために力を掛けないようにし、テープははさみなどで切断し、端部を指でしっかり押さえて接着させる。
 ・ 鋭いエッジや凹凸がある場合は、予め自己融着テープやマスチックテープで包みこんでから電気絶縁ビニルテープを巻きつける。
 ・ 円錐形状の部分は、頂点(小径)側から底面(大径)側に向かって巻くようにする。
 ・ 屋外で雨がかかる部分は、最外層を下から上に巻き上げる。
 ・ 松葉接続部分は、先端を長く作り、折り曲げて巻き込む。
 ・ テープ使用温度範囲を考え、正しく使用する。


●1/2重ねでしわにならないように、軽く引っ張りながら巻く


●巻き終わりは、はがれを防ぐために、張力を掛けないで、はさみで切る。
 終端は指でしっかり押さえ付ける。

塩ビと環境について

 ポリ塩化ビニル樹脂は、常に環境問題と密接に関係している。耐熱安定剤として配合される酸化鉛や廃棄物の燃焼時に発生するダイオキシン問題、また最近では欧州REACH規則の高懸念物質に指定された可塑剤のフタル酸類などが挙げられる。
 ポリ塩化ビニル樹脂は世の中に広く普及した材料であり、その優れた特性とコストのバランスからそれに代わる製品があまりなく、市場からなくなるとは考えにくいが、今後の製品の動向は様々な規制の行方に左右されていくと思われる。
 それぞれの規制の内容や現状を詳しく知りたい方は、塩ビ工業・環境協会のホームページ(http://www.vec.gr.jp/)を見ると詳しい調査の報告がなされているので参考にされると
よい。

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